No.410  2006年7月号
 ある全国大会の分科会でお会いして(お元気だろうか)と今も時おり思い出される方がある。分科会のテーマは「ヒロシマを考える」。開催地が広島ならではの分科会だった。
 参加理由と自己紹介の中で「妻は被爆者です。結婚して数十年になりますが、原爆のことは一度も話したことはない。私もたずねたことはない。八月六日におきたことを、今日はみなさんからおききしたいと思ってきました。」お話を聞きながら、連れ添われたご夫婦の年月の重さといたわり、戦争は終わったあとも永い間心のうちにとどまり、どんな思いで人生を歩んでこられたのかと胸が痛んだ。初めて訪れた広島の街での出会い、どんな思いを抱えてお帰りになったのだろうかと今も考える。
 息子の転校の挨拶に伺った中学校の担任の先生から「母は広島で原爆で亡くなりました。いまも消息はわかりませんが」と広島へ戻る私に話されたのも忘れられない。二十年以上前のことです。
 一時の出会いが思いがけず心に深く残ることがある。
 梅雨が明ければ夏、六十一年目の夏がやってくる。
(HYM)
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