No.408  2006年5月号
 二〇〇五年六月に介護保険見直し法案が成立し、介護保健施設等では昨年十月より「居住費・食費」が自己負担化されました。これまで介護報酬から支払われていた居住費・食費相当額を削減し、利用者に新たな負担を求めたものです。この法案の最大の目的は保険給付の抑制にあり、特に施設給付をどうやって抑えるかが最大の目標とされました。居住費・食費の自己負担化は、施設給付の見直しの一環であり、そのねらいは介護報酬をいかに
減額することができるかということでした。厚生労働省は負担の根拠として「在宅との公平・年金との調整」をもちだし、「在宅では居住費・食費は自己負担している」「年金には居住費・生活関連費が含まれている」とし、施設入居者の居住費用が介護保険から支払われるのは二重取りになり、不公平であると説明しています。しかし年金には居住費・生活関連費が含まれているほど十分な水準の給付とはいえません。また、在宅との公平を言うならむしろ在宅に手当てを加算するべきであると考えます。介護保険の一部負担金に加え、新たな居住費・食費が負担しきれず施設を退所される方が多く出現しています。
 こうした居住費・食費の保険はずしが介護保険にとどまらず、本年十月からは医療療養型病床においても実施されます。介護保険給付の抑制と同様、医療保険給付の抑制が狙いであり、今度は「介護保険との公平」を持ち出して制度の改悪を進めようとしています。入院費の負担に加え、居住費・食費でおよそ五万二千円の負担増(いわゆる「差額ベッド」の料金とは全く別の費用です)となります。二〇〇八年四月からは高齢者の医療費自己負担が二割となるためさらに負担は増していきます。こうした制度改悪を重ね、利用者と事業者の双方に苦痛と困難をもたらすを通じて現在三十八万床ある療養病床をを二〇一二年までに十五万床に激減させようとしています。減らした二十三万床に入院していた人は在宅か有料の老人ホームなどの施設に入るかの選択が迫られることになります。
 税金や保険料の負担増、公的保険を縮小し自己負担を拡大(結局国民は二重払いとなる)し、民間保険の市場をつくろうとする小泉構造改革の市場化・民営化はこのように情け容赦なく進められようとしています。
 当生協としては、居住費・食費の自己負担が「制度」である以上、利用される方へ充分な説明をし、費用負担をお願いせざるを得ません。しかし、経済的理由で施設での療養を断念することがないよう改めて社会保障のあるべき姿を鮮明にし、国にむけた制度の改善要求、自治体に向けた独自施策の実施を求めるなど制度の改善運動をすすめたいと考えます。
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