No.406  2006年3月号
 国民が一年間に病院、診療所、薬局といった医療機関で傷病の治療に要した費用の総額を推計したものを「国民医療費」といいます。言いかえれば「国が医療のために使うお金」です。その国民医療費を人口で割った額、つまり国民一人あたりの一年間にかかるお金が「国民一人あたり年間医療費」です。
日本は2002年推計値、イギリスは2002年値、
カナダ、フランスは2003年推計値
CECD Health Data 2005
 国民医療費が年間で約三一・五兆円ですから、人口約一億二千万人で割るとおよそ二五・八万円/年になります。しかし国民医療費約三一・五兆円のうち国が負担する金額は約八兆円にすぎません。残りの約二〇兆円は国民の保険料などで支払う一部負担金や事業主の負担です。国の総予算は一般会計で約八二兆円、特別会計で約三七〇兆円であることからすれば、国の負担は決して高いとはいえません。にもかかわらず、政府は「このまま医療費が伸びると制度が破綻する」と主張しますが、日本の医療費は国際的には定額です(図1参照)。また、当然のことながら高齢者ほど病院や診療所にかかる機会が増えます。つまり、人口が高齢化すると、医療費は自然に増加するものなのです。これは世界的にも同じ傾向が見られます。医療費のムダを減らすことは必要ですが、いま政府がすすめようとしている医療費抑制は、やせている人にさらにダイエットをさせるようなものです。
わたしたちの声を自治体に届けましょう
(2/11バレンタイン行動より)
 現在、国は医療費の削減のために、診療報酬の減額や患者負担増を考えています。しかし、安心で安全な医療の確保のためには医療にたずさわる人材や、医療機器などの設備が必要です。そして十分な人材や設備を確保するための財源が必要です。診療報酬や医療費ではなく、削減するべきところは他にもあります。いま、国の借金は約七九五兆円もあり「財政は火の車」といわれています。しかしその中でも、関空二期工事など無駄な公共事業は続いています。「米軍への思いやり予算」は年間約二九〇〇億円です。現在検討中の米軍基地再編の経費は全額日本持ちといわれています。これらのようなお金こそ、医療の質や安全確保のために使うことが求められます。たとえば以下のことはすぐにも実行できるのではないでしょうか。
@ 税金の無駄遣いをやめさせること、使い道を変えさせること。
A 税金の入り方を見直し、大もうけしている大企業の社会的責任と保険料負担を求めること(図2参照)
B 欧米から見てきわめて高い医療費や医療器械の価格を欧米なみにする(これだけで一兆円以上の財源が確保されます)。
 小泉内閣の進める構造改革の次の焦点は「医療改悪」です。その内容は「高齢者の窓口負担増」、「長期入院患者の食費・居住日の全額自己負担」、「保険のきかない医療の拡大」、「カゼなどの低額医療の全面自己負担化(保健免責制)」などです。さらには「低額減税の全廃」、「消費税の引き上げ」などの大増税も予想されます。いまなにが変えられようとしているのか、まず私たち自身が学んで知っておかなければなりません。そのための手段として、保健生協の学習会や班会をどんどん利用してみてください。また、現在とりくんでいる、医療改悪反対≠ノ関する署名行動なども必要でしょう。
(学習会や班会、署名用紙などに関するお問合せは保健生協組織部 電話(082)532-1264)までどうぞ。)
(文責・けんこう編集委員会)
【参考資料】
○医療団体連絡会議 パンフレット
○全日本民医連 パンフレット
○広島市医師会広報誌「キラリ」
○現代用語の基礎知識二〇〇四年
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