No.402  2005年10月号
 「来てよし、帰ってよし」の孫たちの賑わいも盆明けとともに静まりカニもやごもやっともとの場所に戻れる状態になった。またしばらくの間、実家を閉めて空家同然にすることをご先祖様に詫びながら鍵を閉める。「賑やかでようありますのー」と一人ぐらしのおばさんに言われ、答えにつまってしまう。盆の間だけなのに・・・。
 四十年前には想像もつかなかったくらい過疎化が進み、町村合併が追い討ちをかけて交通手段もままならないふるさとになってしまった。地方議員も農業委員もふるさとには一人もいなくなり悩みも相談もすぐにはできなくなった。確かな希望のもてるS施策も何も示されないままの統廃合に不安いっぱいの日々を過ごしておられるように思えた。
 バスで隣り合わせた備北地方の人は「広い市になってもプラスの面は何一つ見えません」と話しておられた。「銀行と同じようになって誰が五十円で山の中まではがきを届けてくれるんですかの?」とも。
 選挙の争点だった郵便屋さんは一人ぐらしの人の唯一の話し相手、そのバイクの音さえも消されてしまうことのないようにしたい。
 夏が終わると赤い彼岸花と白いそば畑が広がる素晴らしい景色を映して過疎のふるさとは静かな淋しい世界に戻る。 (HSK)
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