No.419  2007年5月号
 肝臓は沈黙の臓器といわれています。体内の化学工場として栄養素の代謝、解毒作用、胆汁の合成排泄などを行っていますが、病気になっていても最初のうちは症状が出ないことが多いのです。この肝臓に炎症が起こるのが肝炎という病気ですが、自覚症状がないため慢性肝炎や脂肪性肝障害を健康診断で初めて指摘される人が多いのです。
 現在日本には約200万人のC型肝炎んウィルスキャリアが存在するといわれています。C型肝炎ウィルスに感染すると約60~70%の人が持続感染に移行し慢性肝炎になります。初感染から20~30年の経過で肝硬変に進展し、肝硬変になると年に6~7%程度に肝臓癌ができるといわれています。ですから早期診断と治療が必要となります。C型肝炎治癒のための治療としてインターフェロン治療があります。インターフェロンの種類や投与方法が進歩し以前より治療成績が向上してきました。またインターフェロン治療が無効であったり、さまざまな理由で、インターフェロンが使用できない場合には強力ネオミノファーゲンC、ウルソなどの肝庇護(かんひご)療法や瀉血(しゃけつ)療法で、肝炎の進行を遅らせる治療を行っています。
 最近増加してきたメタボリック症候群の肝病変で、人口の約20~30%に認められるといわれています。そのうち約10~20%を占める脂肪性肝炎(NASH)は肝硬変、肝臓癌へと進行することがわかってきました。治療の基本は食事療法と運動療法によって生活習慣を改善することです。糖尿病、高血圧、高脂血症などを伴っていることも多く積極的な治療が必要です。
 これまで、肝炎ウィルス健診を受けたことがない人は是非一度健診を受けてみてください。また健康診断などで肝機能障害を指摘されたら、主治医に相談し精密検査を受けるようにしましょう。
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