No.415  2007年1月号
 平成18年1月より福島生協病院に勤務しております。岡野先生とともに眼科は現在二人体制で診療をおこなっています。これからもよろしくお願い致します。
 さて、今回は日本における中途失明原因のトップを占める糖尿病網膜症についてお話したいと思います。
 糖尿病を発症し、高血糖の状態が5年、10年と続くとカメラのフィルムにあたる網膜の毛細血管に異常が生じ、しだいに視力が低下します。網膜の中心部分から離れた部分での出血は症状がでませんので、糖尿病のあるかたは血糖をコントロールするだけではなく、定期的に眼科を受診し眼底検査を受ける必要があります。
 糖尿病網膜症を詳しく検査するためには、散瞳(さんどう)による眼底検査が必要になります。散瞳とは点眼薬によって瞳孔(どうこう)を開くことで、散瞳薬を点眼して30分ほど待ち、それから眼底を詳しく検査します。散瞳すると3、4時問ほどはまぶしくて物がぼやけて見えますので、この検査を行うときはなるべく車やバイクの運転は避けてもらうようにしています。
 糖尿病網膜症が進行すると、治療方針を決めるために蛍光眼底造影検査(けいこうがんていぞうえいけんさ)が必要になります。この検査は、点眼で散瞳後、フルオレセインという蛍光色素を点滴ルートから注入し、網膜を撮影します。これにより、次に説明する
網膜光凝固治療(もうまくこうぎょうこちりょう)が必要な状態であるかを判断します。
    
 現在、眼科でおこなわれている治療として一般的なものとしては網膜光凝固と硝子体(しょうしたい)手術があります。網膜光凝固は網膜の毛細血管異常に引き続いて起こる新生血管(しんせいけっかん)の発生を抑える目的でおこなわれます。これにより糖尿病網膜症がこれ以上進行するのをある程度予防することはできるのですが、自覚症状は全く変わらなかったり、治療前より悪化する場合もあります。しかし、網膜光凝固術をしないと悪化して失明にいたる可能性が高くなりますので、網膜光凝固は失明を防ぐために絶対に必要な治療です。
 網膜光凝固治療をおこなっても、新生血管の発生を抑えられず、硝子体出血や網膜剥離といった合併症をひきおこすことがあります。これをこのまま放置しますと失明にいたりますので硝子体手術という手術が必要になります。症状が重くなってから手術をするほど、手術後かえって見えなくなる可能性が高くなりますので、適切な時期に適切な治療をおこなえるよう定期的な受診をこころがけてください。
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