No.409  2006年6月号
 小学校四年生のとき、はじめて学級文庫ができた。教室のうしろの一角に小さな本棚が置かれ、「小公子」「小公女」「ロビンソンクルーソー漂流記」など五、六冊の本が並んだ。
 本といえば毎月買ってもらう少女雑誌と貸し本屋さんから借りてくる本くらいだった私にとって、そこはなんともうれしい世界だった。
 朝、ニ、三十分早く登校して物語の世界にはまりこんだ。そこで出あった街や暮らしや登場人物たち、今でも古い知人のように懐かしく思い出される。
 先だって四月八日、「ズッコケ三人組平和を語る」、那須正幹氏の講演会が開催された。
 久しぶりにズッコケ三人組を思い出し、息子たちは全五十巻のどのあたりの彼らに出会ったのだろうと思いつつ、「ズッコケ中年三人組」を読ませて頂いた。絶対にありえないと思うことがひょっとしたら思い始める自分がおかしい。主人公の三人に体験させていないのは戦争。平和で民主主義がある時代だからこそ存在する三人組と那須さんのお話をききながら、イラクや戦争の終わっていない国の子どもたちがもし「ズッコケ三人組」を読んだらと考えてしまった。子供時代の出会いは時として人生のパートナーになることがあると思う。(HYM)
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