No.407  2006年4月号
 毎年見に行こう行こうと思いながら、気づいたら桜の季節。今年こそはと縮景園の梅を見に出かけた。
 梅の花は満開には少し間があったが、陽ざしは穏やかで春間近の午後を楽しんだ。結婚式の前撮りらしい花嫁花婿のお二人が彩りをそえていて、ふと今ここには平和な時間が流れているのだなあと思われた。散策するには程好い広さで、足元近くに咲く草花が季節をおしえてくれる。
 ひとめぐりして京橋川の見える場所に出ると慰霊碑が立っている。一九七八年七月、この地に埋葬されていた六十四体の原爆死没者の御遺体が発見され、同年八月六日に平和記念公園内の原爆供養塔に納骨された旨がそばに記されている。原爆で壊滅状態の庭園にどれほど多くの方が避難してこられたのだろうか。戦後三十三年経って発見され、その時から二十七年が過ぎた。友人の夫君が「どこからでも骨は出てくるよ」と呟かれたという言葉と一緒に、その時のニュースはよく記憶している。久しぶりに春に向かう季節を感じながら、過ぎた六十年が思い起こされた。
 どんな立場の人にとっても、戦争は大きな不幸でしかない。自然が大切にされ、花や季節が楽しめる平和な時代であってほしいと思う。(HYM)
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