No.398  2005年6月号
 高齢者の七%に痴呆症状が見られると言われていますが、その割合は年齢が高くなるほど大きくなり、八十五歳以上では二〇%以上の方に病的な物忘れや判断力の低下が出現します。
 誰でも物忘れを経験し、疲れなどにより集中力・注意力が低下するとさまざまな高次脳機能の低下を経験することがあります。また、加齢によりこれらの能力は徐々に低下してきます。病的な物忘れは、孫の名前を思い出せない、季節がわからない、電話番号を繰り返すことができないなどのかたちで出現します。
 認知症の原因でもっとも多いのがアルツハイマー病などの変性疾患、そのつぎに多いのが血管障害によるものです。
 アルツハイマー病は進行性の病気で治りませんが、ワクチン療法をはじめ有望な治療法が開発されつつあります。現時点では症状を半年前の状態に戻し進行を遅らせることができる薬が使用できます。
 脳血管障害による認知障害は「まだら型」で運動障害を伴うことが多いのが特徴で、これらを治療、予防することが認知症の予防につながります。
 治療が可能な認知障害もあります。ホルモンの異常や頭部の打撲によるもの、頭蓋内の腫瘍によるものなどがあり、早期に発見し治療をすると後遺症を残さずに完治します。
 おかしいと感じたら早めに専門医の診察や検査を受けることをおすすめします。
 高齢者の心を不安にする「ぼけ」の問題は、医療の面だけでなく、本人や介護を行う家族を社会全体が理解し支えることが大切だと思います。安心してぼけられる社会を実現したいものです。
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