No.422  2007年8月号
 「消えた年金」 の問題は、選挙を意識した政府・与党 「改善の掛け声」 とは裏腹に混迷を深めています。当初、政府はこの問題の責任を社会保険庁に擦り付け、他人事のように責任を認めようとしませんでした。国会審議の中で 「政府、厚生労働省、社会保険庁に責任」 があることをやっと認めましたが、その解決策は、「1年以内に年金記録の照合」 など誰もが出来っこないと感ずるものばかりです。しかし、この解決策の中で見過ごせないものがあります。「国民カード」 の導入検討です。
 国民一人ひとりに社会保障番号をつけて年金、医療、介護に関する情報を一元的に管理しようというものです。これを住基ネットと連動させれば転勤、結婚など情報の変化に自動的に対応でき、今回のような年金の記録漏れがなくなるということが導入の趣旨のようです。 
 医療情報、介護情報などがカード情報として書き込みされているので、どこでも投薬、検査の記録介護認定状況など確認することが出来るなど一元化されることも考えらます。しかし、一元管理をするからにはそこに盛り込まれる情報の選択権は国民にはありませんつまり管理されたくない項目も国が決めれば管理の対象となってしまうことです蓄積される情報が増えれば増えるほど、人生を丸ごと一枚のカードに入れて持ち歩くことになります。社会保障だけでなく、行政サービスなど様々な場面で利用されることにもなると思われます。社会保障番号の導入(さらに住基ネットの結合)は、限りなく 「国民総背番号制」 に近づく危険な動きと思われます。自衛隊が国民の監視活動を密かに行っているという実態が暴露されましたが、 「国民カード」 の導入は国民監視の道具となる可能性が高く、ずさんな年金管理問題の再発防止策として導入が具体化されるような軽々しいものではありません。
8月号TOPに戻る ≪前の記事 次の記事≫