No.418  2007年4月号
 前々回(二月号)でワーキングプアという、働いても最低限度の生活ができない人たちが急激に増えていることを紹介しました。今回は「きちんと働いているのになぜ?」こうした状況が起きるのか、その原因についてお話しします。
 最大の原因は、正規雇用から非正規雇用に雇用形態が大きく変化したことと賃金水準の低下です。
 バブル経済が崩壊し、企業は国際競争力の維持・強化を図るためにコスト削減、とりわけ人件費の抑制を進めてきました。二〇〇三年六月に実施された労働法制の規制緩和は特に正社員の採用を減らす一方で非正規雇用と呼ばれるアルバイト、パート、派遣・契約社員の増加を加速させました。景気が回復したといいますが、若者が定職に就けない、三人に一人は非正規雇用の状況です。かつては企業が終身雇用で社員をゆっくり育て、年功序列賃金で一定の賃金を保証しながら、成功を収めたものには次の面白い仕事(役職も含めて)を与えることで企業と社員の両方が成長してきました。
 ところが、アメリカ流の成果主義の導入で結果が全てとなり、企業も社員もゆっくり育つ(育てる)ことが否定されてきました。そして、一部の「エリート正社員」とその指示で働く多数の「非正規雇用のホワイトカラー」ともっと多数の「非正規雇用のブルーカラー」で仕事が組み立てられるようになりました。
 非正規雇用の社員は、賃金も身分保障も低く不安定です。生活保護基準よりもずっと下の収入にもかかわらず、収入に比べて高額な医療・年金の保険料が賦課され、それが払えないために医療と年金の保障を受けることができないのです。働いているので生活保護制度からも排除されています。
 これまでの「働けば暮らせるはず」という大前提はもはや今の社会では通用しなくなっています。本来の社会保障がまったく機能しない仕組みに作りかえられているといえます。その状況は自然に発生したのではなく、政府と大企業によって人為的に作り出されたものである以上、作り変えることもできます。この「人災」はすぐに改めなければいけません。
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