No.413  2006年10月号
 右の条文は、皆さんもよくご存知の憲法二十五条第一項の条文です。第二項には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に務めなければならない」と国の責任が明記されています。この社会保障の根幹となっているのは生活保護です。生活保護は私たちが疾病や失業などさまざまな理由で生活できなくなった時に頼る「最後の命綱」です。その「最後」がいま大きく変えられようとしています。
 厚生労働省は全国の生活保護を担当する福祉事務所長会議を開き「社会保障の分野で改革の手がついていないのは生活保護」として改革の推進を表明しました。ではどのように改革しようとしているのでしょうか。歳出削減が先にありきですから給付の削減(各種加算の廃止)は当然のように行われています。また、いわゆる「水際(みずぎわ)作戦」として保護申請に来た人に申請書を渡さず、「まずは就職活動をしてください」「親族で援助できる人を探してください」などの理由をつけ、単なる「相談」として帰らせるなどしています。こうした、申請受理の制限は北九州の「餓死」事件、秋田の「焼身自殺」などの不幸な結果を招いています。

 さらに、驚くべきことに「リバースモゲージ」(逆抵当裕氏)制度を生活保護に優先させようとしています。リバースモゲージとは、自治体や金融機関が高齢者に対し、持ち家を担保に一定の契約期間中の生活費を融資し、死亡した時は家を売却しその返済に充てるという制度です。つまり、国に頼るのではなく、家を担保に借金して生活しなさいということです。これでは憲法二十五条の精神は根幹から覆ってしまいます。持ち家のある人は、このリバースモゲージが大いに「活用」され、生活保護から排除される事になるでしょう。


 生活保護水準は国民の消費水準の六十%から七十%です。決して充分ではありませんが、この水準を下回るような低賃金で働かせてはいけないという重要な水準です。したがって財界や大企業にとっては大変目障りな制度と水準といえます。ワーキングプアという言葉がありますが、生活保護水準と変わらない、あるいはそれ以下で働く労働者が急速に増える中、私達の暮らしの水準を切り下げさせないためにも生活保護の水準をもっと高くしていくことが求められています。
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