No.384  2004年3月号

 冬至から立春までの一ヵ月余りで夕暮れ時の日脚が目に見えて延びてくる。 窓ごしに部屋の奥まで届く日差しは弱いけれど温かい。
 あかあかとして落ちる夕日を見ながら「チグリス・ユーフラティス川の流域に発祥したメソポタミア文明は…。」で始まる高校の世界史の冒頭の文章を思い出す。 映像も何もない五十年前のこと、その河面かわもに映える夕陽を想像しながら先生の話を聞いた懐かしい思い出になる。 今その国をめぐって自国の思惑をまる出しにして争っている人たちがいる。
 築かれた文明も遺跡も破壊し尽くされてその国を担う多くの子どもたちの生命さえも犠牲にされて。 平和憲法の下でまさか銃で殺されるようなことになるとは思いもしないで入隊したという声がテレビで流されていた。
 こんな本音が流されるようなことはめったにないが、泣きじゃくりながら父親の派遣を見送る子どもたちの姿、不安そうな家族の様子、どんなに悲惨な映像が流されても、言葉としては人道支援のための派遣として伝えてしまう報道側の姿勢に流されないようにしたい。 何よりも 「いのちとくらしを守る」ことを中心に据えて活動している私たちは、憲法第九条を絶対に変えさせることはできない。
 地球上のすべての人が等しくおだやかな日差しを楽しめる日がくることを願っている。 (HSK)

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